前々から名前だけは見聞きしていた宝塚の映画館シネ・ぴぴあにて、かれこれ10年も前からオススメされ続けてきた映画「幕末太陽傳」を観てきました。監督の川島雄三さんがいかに凄い人だったかということについても、いろんな人から話を聞かされ続けていたものですから、期待を裏切らない素晴らしい作品だったことを喜ぶとともに、ちょっと肩の荷を下ろした気分でもあります。
出演はフランキー堺, 南田洋子, 左幸子, 石原裕次郎, 芦川いづみ…といった超豪華な顔ぶれ。さほど映画に詳しくない私ですらクレジットロールを観ながら軽く興奮してしまいました。
今の街並みからは想像もつかないような品川に実在したという遊郭を舞台に、フランキー堺さん演じる主人公の活躍模様が描かれた作品ですが、白黒映像やゆっくりしたテンポに違和感を感じたのも束の間、フランキーさんの軽妙洒脱な台詞回しと豊富な運動量に釘付けでした。そりゃ天下のスター裕次郎も形無しですわ。つかまあ普通に大根さんでした。だいたい高杉晋作役をやるには顔が下ぶくれ過ぎるんですよ。今で言うところの宮藤さんがジャニーズ役者を使うような感じですかね。
記念映画とあってか舞台セットも豪華でしたし、着物の着こなしもさすが皆さん板についておられます。50年前も変わらぬ風貌の菅井きんさんや山岡久乃さんに至ってはお歯黒姿。今じゃありえない光景ですよね。めっぽう面白い筋書きはいくつもの落語のネタを下敷きにしているだけあって、親しみやすく、かといって決して媚びてはいない。役者の台詞と演技の明るさとは裏腹に、その影にあたる暗さも随所に散りばめられており、そのバランスが実にカッコ良かったです。これがホンモノってやつなんでしょうね。今の時代って実は不幸なのか?
あまりに面白かったのでラストがどうなるのかとハラハラしましたが、そうきましたか。どうやら監督自身が希望したラストはあまりの斬新さにスタッフ・出演者全員に反対されて撤回されたとのことですが、その没になったラストというのは今やあちこちの舞台で見かける手法。蜷川さんも串田さんも50年前の模倣をされてたんですね・・・。
映画鑑賞後はせっかく宝塚に来たのだからと、ヅカファンの聖地である宝塚大劇場へと続く「花のみち」を歩き、元スターさんらしき人、出待ちの列、チケット求むのボードを手にした人たちといった光景を目にしながら手塚治虫記念館へ。
玄関口にあった大きな火の鳥オブジェを見ながら、某バレーボールチームがあんなに安易にこの名前を使っていいものかとひとしきり考えてしまいました。いいわけないよな。
こちらはHPがきわめてシンプルな作りだったこともあり、映画とは違ってあまり期待していなかったのですが、直筆生原稿というものは、かくも人の心を捉えるものなのか。そのものズバリ、それがすべてですもんね。陳列ガラス棚に張り付いてしまいました。幼少の頃よりの膨大な作品タイトル表を見ながら、手塚作品を読むことはジブリ作品を観ることよりも国民の義務じゃなかろうか・・・などと考えていたところ、チラシが目に入りました。
「手塚治虫文庫全集【全200巻】2009年10月9日、刊行スタート!!」
なんたるタイミング、これはもう絶対に読めという運命ですな(大げさ)。このラインアップだと、まずはリボンの騎士ですかね。
記念グッズがイマイチなのは残念でしたが、楽しかったです。企画展によってはまた来たいですね。
多忙な一日は餃子の??(みんみん)にて締めとなりました。周りは六甲全山縦走帰りらしき登山客たちだらけという宝塚空間にてビールと餃子を注文。奇妙かつ美味。いいんじゃないでしょうか